個人消費が伸びない状況下にあって、大型SCが次々と開発され、SC間の競争はますます厳しいものとなっている。
それぞれのSC運営者は毎日の売上数字に一喜一憂している。
しかしここで改めて考えたい。
小売業とSC運営は、本質的に全く異なるにもかかわらず、SC運営現場ではとかく大型小売店の感覚そのもので運営されている例が少なくない。
国内の本格的な商業開発の歴史は浅く、本当の商業ディベロッパーといえる会社は極めて限定されており、運営にあたっては今まで日本の流通業界を支えてきた百貨店やGMS(大型量販店)の出身者が多いことも一因である。
SCは商品を売る場所である以上、GMSで培ってきた多くのノウハウはSC運営で貴重である。しかし自らの店舗の売上を増大することと、入居している専門店(テナント)全体を活性化させ、SCに関わる不動産投資効率を向上させることは基本的に異なるのである。
最近は、賃貸料を「売り上げ歩合方式」としているところが多いから、店舗の売上が増大すれば賃料収入が上がることは間違いない。
しかし、商業ディベロッパーの最大の使命は、不動産投資として成功させることである。
即ち中長期的にテナントからの賃料収入を確実に増大させることなのである。
商業施設の不動産投資を成功させるためには、入居している専門店(テナント)の売上が増大してSC全体が賑わう仕組みを作り、結果として有利な賃貸料収入を確保する必要がある。
このためにはテナントの構成の魅力、各店舗の魅力、施設の安全性・快適性、エンターテイメント性を高めて長期間の集客力を確保する、言い換えれば商業不動産としての価値をアップさせることこそが重要である。
不動産投資は少なくても10年、15年の期間で考える必要がある。
したがって、SC経営には「短期戦略」と共に「中長期戦略」が必要である。
私がSCの集客戦略のお手伝いをさせていただいて痛感するのは、SC運営者が短期視野でしか判断しない傾向があることである 。
具体的な販促においても、チラシ広告に主眼を置いて価格競争を行い、ポイントカードの倍異数を3倍、5倍と上げていったり、年末になればガラポン抽選会を行うという10年一日のごとき手法である。
これらのプレミアムキャンペーンは、それなりに有効であるが余りにも即効的な効果だけを追い求めている。
これらの手法と共に、もっと、「中長期的なファンづくり」すなわち中長期的な集客力の確保に力を注ぐべきである。すでに言われているように「マスマーケティング」から「ワンツーワンマーケティング」へ移行している中で、地域住民と密接な関係を作り上げ、SCが地域のコミュニティーの拠点として機能することを目指したいものである。
結果として「わが街のSC」として長期的なファンつくりを実現することが、SCのディベロッパーとして不動産投資を成功させることである。
不幸にして、テナントが営業不振に陥れば「退店」という選択肢がある。
しかしながらディベロッパーは「退店」できないのである。
中長期の視点で運営に当たる必要性を痛感している。
|