SC経営士会の「バリューアップ委員会」で任意のグループによる研究が進められている。私は、相原栄治氏(小田急ビルサービス)・河西新二氏(ラムラ)と3人で検討を行いこのたびレポートを取り纏めることができた。
この一端をご紹介したい。
1.テーマ
東京都中心部においては、居住用マンションの建設が急増し、都心への居住人口の回帰が顕著である。一方、都心部においてはかつての商店街は消滅し、日常生活における生鮮三品をはじめ日常生活に支障を生じている。
当チームでは「新都市生活者」にターゲットを絞り、必要とされる新たな商業施設の業態についてスタディを行った。
※ 具体的な検討を行うために、東京都中央区、特に東日本橋地区をモデルとした。
2.東京都中央区の状況
東京都中央区を例にとれば、1953年には17万人だった人口は年々減少し1997
年には7万人になったが、2000年を契機に増加に転じ、2006年には10万人
を突破した。主たる増加人口は、年齢が30〜40才代であることが分かった。
この間、東日本橋地区における小売店は、1982年〜1997年の15年間で、小売店数は54%に、販売額は35%に減少した。
よって、かつては東京の中心地であり極めて利便性の高かった地域が、日常生活を送る
上で、郊外より不便を強いられていると言う矛盾も起きてきている。
自転車を使って、日本橋の中心地にある三越に食料品を買いに行くような状況である。
新たな都市生活者はどんな人たちにどのようなニーズがあるか?を考察した。
かれらをキーワードで拾い上げてみると、
★ 職住接近 → 時間の有効利用 (個人の時間・趣味の時間)
★ コンクリートの中の生活 → 自然希求・いやし願望
★ 芸術、音楽、スポーツに幅広い関心
★ 高度成長期に育った新しい価値観(日本の貧困を知らない)
★ 高学歴・インターナショナルなセンス
★ 常に新しい、レベルの高い商業施設の情報をもっている。
★ 個人的な生活へのこだわり
3.新都市生活者の求める「街」「商業施設」は何か
ここでは、結論だけにとどめるが
@ 新都市生活者の日常生活の利便性UP
A 新たな人々の交流する空間が必要。
音楽・芸術をはじめ様々な切り口でのコミュニティーを創造する。
B 江戸時代からの伝統文化、歴史に触れる、祭りを創る(or復活する)など、地域活性化のきっかけを創る機会を創出する。
4.新たな商業施設のイメージ提案
現実問題として、都心部は不動産価格が高騰し、また開発すべき土地がほとんどないのが実態である。
したがって実現性のあるケースとして、横山町の繊維問屋街が崩壊状態にあるので、これらの古いビルのコンバージョン計画を念頭に置いた。
「(仮称)ヒューマン・スクエアー」の概要
@ 建物の概要 延べ面積 500坪〜1000坪
4〜5階建 1フロア 150〜200坪
A コンバージョンのための改修工事を行い、テナントを募集すると言う従来型の手法ではなく、次の方向とする。
● 物販と交流システムの利用計画を組み合わせた具体的計画とする。
● 開発時に、交流スペース(次ページ参照)の運営とテナント管理を含めた総合的なプロパティマネジメントの仕組みを作る。
B イメージは以下の通りである。
4F 充実した人のふれあいを目指す「交流クラブ」ゾーン
会員組織を基本とする住民主体の交流 → 心の豊かさの提案
とかく人間的なふれあいの欠落する都心部の生活に潤いを創造する。
(銀座などにある広域オフィスワーカーを中心とするものとの差別化)
<案> ■ 東京・江戸文化の研究(例:江戸歴史、三味線、落語など) ■ 異業種交流会 ■ 会員セミナー ■ 文化・芸術の愛好者交流会
(例:絵画・クラシック音楽・ジャズ・スポーツなど) ■ 地域行事(祭りなど)への参画プロジェクト etc.
3F 健康・美容ゾーン (日用雑貨) ■健康・美容の情報発信基地 ■
ネイル・マッサージ・岩盤浴・イアーエステなど
2F 日常生活サポートゾーン (日用雑貨)
1F 日常生活サポートゾーン (食品) ■コンパクトなコンビニの食品部門を特化した店舗
あくまでリーズナブルな価格帯の必需品(高級品はデパチカ)
例:フーデックスのような業態
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