第1回日本SC大賞
「日本SC大賞」について感じたことを述べてみたい。
5月14日に日本SC協会年次総会がホテル・ニューオータニで開催された。
席上、今回初めて制定された「日本SC大賞」の表彰式が行われ、栄えある第1回の金賞には「玉川高島屋ショッピングセンター」が選出された。
SC協会は、今年が創立30周年となるが、玉川高島屋SCは正に日本のショッピングセンターの歴史と重なるものである。
本SCが日本で最初の欧米型SCを目指して再発されたことは大きな意義がある。
また何よりも素晴らしいことは、現在もSC業界の先頭を走って進歩し続けていることである。
私は、目黒区で育ち東横線・大井町線はよく利用していたので立地はよく承知している。
子供の頃(昭和20年代)は、二子玉川といえば川に泳ぎに行く場所であり、遊園地や花火大会に行くところであった。
開発当時でも当時の状況を考えれば、とても百貨店が進出する場所とは考えられなかった。開発計画は大英断であったと想像される。
今でこそ来場する車の4割が外車であるという特殊なマーケットであり、「あのような良い立地で営業すれば誰がやってもうまくいく」などとの声を聞いたことがあるが、とんでもない話で、これは長年にわたってSCを中心に街つくりが進んだ結果である。
第1回のSC大賞としては、正に本命が選出された妥当な結果であったと思うし、関係者に拍手を送りたいと思う。
さて、私はこの「SC大賞」の選考委員をおおせつかり、全国からノミネートされ各支部で第1次審査を通った26SCの選考に当たった。
当初から予想されたことではあるが、立地条件、規模、コンセプトが異なるSCを評価することなど至難の作業であった。
採点項目は事前に長時間かけて論議され決めていた。売上げ推移、地域貢献、顧客対応、テナント関係、環境対策・・・等々である。
選考結果は、全国のSC関係者が「なるほど」と納得し、今後目標にできるSCでなければならない、また現在考えられている枠組みだけでなく今後のSCのあり方を示唆するものでなければならないと考えていた。
私は、審査が進むに従ってこうしたSCを選ぶ資格などないとの思いが強くなっていった。
まず、対象となった26のSCの半分程度しか見ていないのである。
SCは正に不動産開発として、代替性のない立地に個別の施設を設けているものである。
現場を見ないで評価などできるはずがない。
見ていないSCを含めて簡単に(と私には思えた)論評する発言には違和感を覚えた。
応募資料がいかに上手に作成されていても、SCは「現場」こそが重要である。
このことは、私が4年間現場の第一線にいた経験に基づく実感である。
今回の机上の選考で、改めて現場の重要性を認識するという皮肉な結果になった。
また、そもそもコンセプトの異なるSCを並列で評価などできないと実感した。
今回は第1回の選考であるために、全国2600のSCを対象とすることになった。
2年後に行われる第2回SC大賞の選考では
(1) 一定期間にオープンした新しいSCだけを対象にする。
(2) 総合評価ラインをクリアーしたSCの中から、ハードあるいはソフト面で将来のSCのあり方に一石を投じた先見性のあるSCを選ぶ。
(3) 最終選考に残ったSCについては、選考委員が現場を視察して、当事者からのヒアリングも行う。
ということが望ましいと思う。
表彰することが目的ではなく、将来のSCのあり方に協会として示唆を与えるという機能を重視すべきであろう。
子供を評価するのに、算数、国語、社会などすべての科目を満遍なく良い点を取る優等生を選ぶのではなく、体育でも理科でも1科目にキラリと光る才能があるものを見出すことが、将来の世界的な科学者や芸術家、オリンピック選手を生むことになる。
これとSC選考を同等に論じることはいかがかとは思うが、要はSCを取り巻く環境が大きく変化している中で、将来を示唆する「独創性」にこそ価値を見出していくことが必要と思う。
そしてその「独創性」とは、現場を知らないコンセプトメーカーが並べるような抽象的な言葉でなく、現場で表現されている事例そのものでなければならないと思うのである。
このページのTOPへ戻る
HOME
|
サイトマップ
|
お問い合わせ