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プロ野球に見るCS
 プロ野球界は、オリックスと近鉄の合併問題に端を発して、1リーグ制か2リーグ制かと大議論が起きている。
私は、青春時代に「野球が人生」というような生活を送り、60歳を越えた現在でも40歳以上の人間で構成されている神奈川県の野球リーグ戦で、年間30試合をこなしているという大の野球ファンである。 
最近のプロ野球に関して発言したいことは山積しているが、余りにも原点を忘れた、すなわちファンを無視した方向で進んでいることに強い憤りを感じている。

 終戦後の日本において、野球は国民的な「文化」であった。 すべてを失った敗戦の中から、人々は「りんごの歌」に明るさを見出し、当時の男たちは苦しい生活の中に赤バットの川上、青バットの大下、物干し竿バットの藤村などのプロ野球に夢中になった。国民の唯一最大の娯楽であったといってよい。
モノ不足の折、ボールもバットもないので、子供たちは棒切れをバットに、小さな石ころを布で包んで紐で縛り上げてボールをつくり毎日暗くなるまで野球に熱中していた。 多くの子供たちが野球選手になりたいと考えていた時代であった。
初めてのグローブは、布製でボールを補給する場所だけ薄い皮が貼り付けたものだった。 当然のことのように私は中学校で野球部入部したが、スパイクシューズも布製でゴム底、それにスパイク(金属の歯)がついていた。
川上、大下、藤村そして山内、長島、王、中西、豊田、吉田、稲尾、金田、杉浦……かつての輝かしいプロ野球選手たちの動きが目に浮かぶ。

 さて、プロ野球は国民の圧倒的な支持を受けながら、次第に輝きを失いつつある。
この原因は、レジャーが多様化したなど社会的な要因もあるものの、プロ野球関係者がファンを無視して多くの過ちを犯してきた結果であると思う。
緊急事態に至っている今日こそ、プロ野球の抱えている多くの課題を抜本的に見直すべきであるのに各球団が自己の利益のみを考えて行動し、最高責任者であるコミッショナーがほとんど機能していないことに大きな憤りを感じている。

 今まで何度も「こんなことではファンからそっぽを向かれる。」と考えてきたことがたくさんあった。発言したいことが多いが、二つだけあげてみたい。
(1) 巨人依存のTV放映
球界の盟主として君臨してきた人気チーム巨人は、長島、王という絶対的なヒーローの出現で、不動の人気チームになった。
各TV局は、巨人の放送を中心に行ってきた。
何よりの問題は、他球団もこれに迎合し、関係者がこれを見逃してきたことである。
私は、日本で連続首位打者を獲り続けたイチローのバッティングが大好きである。しかし当時TVで殆どオリックスのゲームは放映されなかった。 ところがアメリカにわたってMLBに挑戦してからは、毎日のスポーツニュースで1年間の全打席が見られるという誠に皮肉な現象である。

(2) ドラフト制度についても、チーム力の均衡を図る目的と契約金額に歯止めをかけるために設けられたのにも拘らず、「自由獲得枠」などという人気球団の都合の良い仕組みが導入されてしまっている。
要するに発言力の強い特定球団の都合で進んできてしまっている。

 そのほか、契約金問題、フリーエージェント問題など言いたいことは山積しているが、ここではこの辺でとどめたい。

 私がここで申し上げたいことは、プロ野球は(信じられぬことであるが)「本当に野球の好きな人間にゲームを観てもらう。」という原点を長年放棄してきたことである。
いくらサッカーが盛んになったとはいえ、野球は未だに圧倒的なファンを抱えている。 東京ドームのネット裏と内野席の大部分が「年間ボックスシート」として、シーズン初めに販売される。 高額な料金であり、購入者のほとんどが法人である。 会社でシートを1年間確保して、取引先などの接待に使おうという事情である。
数年前に読売巨人軍の関係者から話を伺う機会があったが、「年間収入が200億円、内訳の主なものは入場料とTV放映権である。しかも入場料の大部分は、興行前に入金される。 粗利益率が80%」との話であったようである。
事業としては、年初に大口の販売を行い事前に多額の収入があるという経営は安定する。 しかし最も重要なことが欠落してきた。
なぜなら本当に野球の好きな人々が東京ドームで試合を見ようとしても、良い席はすべて法人に販売済みであるために見られないという状況が長く続いている。 その結果、外野席のみが盛り上がり、アメリカ大リーグで見られるような家族が一緒になって子供たちがグローブを持って内野席に詰め掛けるというシーンは生まれない。 背広を着たサラリーマンが試合開始に遅れて駆けつけ、盛り上がらずに良い席に座っているという風景である。
要するに本当に野球を愛する人たちや子供たちを排除してきたのである。
マスコミの議論でもこの点の指摘はお目にかかっていないように思う。

 先日、7月にオリンピック日本代表チームが、強敵キューバと壮行試合を行った。
私は、発売と同時に予約していたので、ネット裏の真裏、前から10番目という通常の公式戦では絶対に見られない席で観戦することができた。 周囲は、正に野球好きの人々、そして子供も数多く見られた。一球ごとに歓声が沸く。
これこそが本来の姿である。
11月には、アメリカ大リーグ選抜群が来日して全日本と対戦する。 早々と前売りチケットを予約した。 良い席で、真からの野球ファンとともに観戦できるのが楽しみである。

 プロ野球がビジネスとして今後も成長していくためには、システムとして様々なことが話題となるが「本当に野球が好きな人に球場に足を運んでもらう。」という原点をしっかり見つめ直すことからすべてが始まる気がする。
こうした原点を忘れた事業に繁栄などある筈がない。

 商業施設のCSと重ね合わせて、憤りつつ毎日のプロ野球報道をみている。


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